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化的背景を考慮すべきことは後述の通りであり、通常は、製品のメーカーが一義的にその責任を負う。ところが、船舶が船主に引き渡され、造船所の手を離れてから生じた乗組員の変更に伴う警告ラベル・取扱説明書の修正は、船主の責任において行われるべきものと考えられる。
例えば、当初はA国籍の乗組員が乗船するとの前提で建造された船舶が、その後、船主の都合によりB国籍の乗組員が乗船するようになった場合には、船主は警告ラベル・取扱説明書をA国語のものからB国語のものに差し替えるべく、必要な手配を行わなくてはならない。船主がこれを怠り、B国人船員がA国語の警告ラベルを理解できず、これにより事故が起きた場合には、船主がその責任を問われる可能性がある。

 

4.2.3 造船所としての義務と責任のあり方
(1)最終製品としての船のPLP対策の掌握
前述のとおり、船舶は多数の部品や製品から構成されている製造物であり、また、個々の構成部品や製品を単体で見た場合には危険が存在していない場合でも、「船舶」という特殊な空間に設置されることにより生ずる潜在危険があり、これらに対する対応も必要になってくる。
「船舶」という最終製品の製造業者である造船所は、上記の事情に十分配慮し、総合的な見地から、潜在危険のチェック、安全対策の適正の判断、欠落している製品安全対策(安全装置の追加、警告ラベル・取説の追加など)を実施しなければらならない。

 

(2)設計・建造段階での建造船安全対策のあり方
造船所は、船舶の製造業者として、船舶運航時の安全性の見地から、建造船の設計上・構造上の製品安全対策を行う義務を負う(法規の適用、使用・操作方法の予見、危険の予見など安全性評価基準の策定と的確な運用)。

 

(3)購入機器メーカーに対するPLP対策の適正調整
造船所は、自社が購入する舶用機器の各メーカーに対し、自社建造船の安全基準に合致した製品安全対策を実施するよう要請する必要がある。これにより、上記(1)に述べた問題を軽減していくことができる。

 

(4)船内システムの運転・操作などに関する警告ラベル、取扱説明書及びトレーニングプログラムの完備
乗組員が、安全に船舶を運航することができるようにするために、船内システムの運転・操作・メンテナンスなどに関する警告ラベル及び取扱説明書、トレーニングプログラムの作成・実施が不可欠である。

 

 

 

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